住宅性能の根幹を成すのが「断熱性能」と「耐震性能」です。
見た目や間取りと異なり、目に見えない性能だからこそ、家づくりの初期段階で正しく理解しておくことが欠かせません。特に日本の気候は四季の寒暖差が大きく、さらに南海トラフ地震などのリスクも抱えているため、断熱と耐震の基礎知識は“住まいの安全性・快適性・光熱費”すべてに直結します。
この記事では、断熱等級・UA値・耐震等級といった住宅性能の基本から、工務店選びのポイント、さらに三重県で必要となる具体的な性能目安まで、網羅的にわかりやすく解説します。
断熱等級
断熱性能を判断する指標として使われるのが「断熱等級」です。
断熱等級は1〜7まで設定されており、数字が大きいほど断熱性能が高く、家の中の温度が外気に影響されにくくなります。
断熱等級の主な特徴
・等級4:2025年省エネ基準として義務化される水準。一般的な新築住宅の最低ライン。
・等級5:高断熱住宅として快適性が向上。冷暖房負荷が減り光熱費が下がる。
・等級6:北海道レベルの高断熱基準に近づく。UA値0.46以下が目安。
・等級7:日本最高クラスの断熱性能で、パッシブハウスレベル。
断熱等級が高いほど「夏涼しく冬暖かい」ことに加え、
・ヒートショックの防止
・結露やカビの発生抑制
・冷暖房コストの削減
といったメリットが得られます。
特に家中の温度差が少ない住宅は体への負担が軽く、快適性が飛躍的に向上します。
UA値とは
断熱性能を数字で評価する際、必ず登場する指標が UA値(外皮平均熱貫流率) です。
UA値は、住宅の外皮(壁・窓・屋根・床)から逃げる熱の平均量を示し、数値が低いほど断熱性能が高いことを意味します。
UA値の基本ポイント
・UA値が小さい = 熱が逃げにくい = 光熱費が下がる
・断熱等級とも連動しており、一定のUA値を下回る必要がある
・住宅の性能・快適性を比較する際の最重要指標
地域による基準差
地域区分ごとに UA値基準が異なります。
三重県(地域区分6)の基準は UA値0.87以下 が最低ラインで、ここを満たせば等級4相当といえます。
しかし快適性を考えると UA値0.6以下 が実務的におすすめされる水準であり、断熱等級5の基準になります。
近年では UA値0.5〜0.46 を目標とした高性能住宅も増え、全館空調やパッシブ設計と相性が良く、年間光熱費が30%以上削減できるケースも珍しくありません。
耐震等級とは
地震に対する建物の強さを表した数字が「耐震等級」です。
耐震等級は1〜3の3段階が設定されており、地震大国の日本では最重要指標といっても過言ではありません。
耐震等級1
・建築基準法を満たす最低ライン
・震度6強〜7の地震で「倒壊・崩壊しない」ことが目的
→ 日常の安全は確保されるが“住み続けられるか”は別
耐震等級2
・耐震等級1の1.25倍の地震力に耐えられる
・避難所や学校などの耐震基準と同レベル
→ 一般住宅でも確保しておきたい水準
耐震等級3
・耐震等級1の1.5倍の強度
・消防署・警察署など防災拠点レベル
・地震後も“住み続けられる家”を目指すなら必須
→ 実務的には、この等級3が現在の事実上の標準推奨レベル
また、2025年以降の制度では 長期優良住宅は耐震等級2以上が必須 となっており、減税・補助金の観点からも等級3の価値は高まっています。
工務店を見るポイント
断熱性能・耐震性能を語る際、最も重要なのが「どの工務店に依頼するか」です。
性能表示が優れていても、施工品質や管理体制が不十分なら、数字通りの性能が出ません。
工務店を見極める際のポイントは以下の3つです。
1. 性能・施工力を見る
チェックすべき項目:
・耐震等級(2以上、理想は3)
・断熱等級、UA値
・構造計算をしているか(許容応力度計算が理想)
・気密測定(C値)を実施しているか
・第三者検査や社内検査の体制
「数値を明示できる工務店」は信頼性が高い傾向があります。
逆に、性能を数値で説明せず“感覚的な言葉だけ”で説明する会社は注意が必要です。
2. 担当者の提案力を見る
・家族構成・予算・暮らし方をヒアリングし提案できるか
・仕様や間取りの理由を論理的に説明できるか
・見積りの明細(数量・単価)が明確か
提案力が高い会社ほど、性能とコストのバランスを上手く調整してくれます。
3. アフター体制を見る
・保証内容(構造・防水・設備など)
・定期点検の頻度
・トラブル時の対応速度
・OB施主の評価
性能は「建てて終わり」ではなく、住んでからのメンテナンス体制まで含めて初めて価値が生まれます。
三重で必要な性能の目安
三重県は、南海トラフ地震のリスクに加え、
・夏の多湿
・冬の“鈴鹿おろし”による底冷え
・沿岸部の塩害
・山間部の湿度負荷
といった気候特性を持つ地域です。
そのため、必要となる断熱・耐震の基準は次のようになります。
三重で推奨される断熱性能
性能レベルの目安:
・断熱等級5以上
・UA値0.6以下(できれば0.5前後)
・Low-E複層ガラス
・全館高断熱(天井200mm、壁140mmグラスウール等)
これらを満たすことで、夏の冷房負荷・冬の暖房負荷を約20〜30%低減できます。
地域別の調整ポイント:
・北西部(四日市など):北西風が強いため北西壁の断熱強化
・伊勢志摩:塩害に強い窓フレーム、夏の日射遮蔽
・南勢山間部:湿度が高いため断熱等級6と通気工法の併用
三重で推奨される耐震性能
・耐震等級3が必須レベル
・地盤強化が必要なエリアもある
・木造2階建てでも構造計算(許容応力度計算)が重要
南海トラフ地震の想定揺れを考慮すると、等級1や2では「地震後も住み続けられる家」を確保するのが難しいため、等級3の価値は非常に高いと言えます。
気密性能(C値)
断熱・耐震と組み合わせて考えたいのが 気密性能(C値) です。
三重県は湿度と温度差が大きいため、
・C値1.0以下
を目安にすると、結露防止と冷暖房効率の向上が期待できます。
まとめ
断熱性能と耐震性能は、目に見えないが最も重要な住宅性能です。
これらの基礎を理解することで、家づくりの判断軸が大きく変わります。
■断熱性能の要点
・断熱等級は5以上が快適性の基準
・UA値は0.6以下、可能なら0.5前後
・窓・気密・通気も断熱とセットで考える
■耐震性能の要点
・耐震等級3が実質的な現代標準
・地盤と構造計算で性能確保
・災害後も“住み続けられる家”が重要
■工務店選び
・性能の数値を提示できるか
・施工力・提案力・アフター体制が揃っているか
■三重県の性能目安
・断熱:等級5〜6、UA0.6以下が実務的に適正
・耐震:等級3
・気密:C値1.0以下
この基礎知識を押さえておくことで、間取りやデザインを考える際にも「性能を土台にした安心できる家づくり」が可能になります。